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(5 焼戻しの影響
鋳鋼や鋳鉄において、内部に巣などの欠陥が存在するおそれのある部分は、焼入れ後の置割れに注意をする必要がある。焼入れ前の応力除去なましや、焼入れ後の速やかな焼戻しの実施が望ましい。
(A)焼戻割れ(急速焼戻しの影)
誘導加熱による焼戻しの場合、急速に昇温すると割れが発生することがある。この場合は周波数を低くする。あるいは多段加熱かゆっくり加熱を行うなどの工夫が必要となる。
(B)研削割れ(発熱の影響)
高周波焼入れされた処理品は、低温焼戻しされることが多いので、発熱が著しいような条件で研削すると、局部的に急速焼戻しが追加されたことになり割れを生じることがある。発熱を制御しながらの研削を実施するような条件設定が必要である。図4.1.30に研削割れの状況を示す。
(U)溶損
(@)加熱溶損
薄肉、尖角部、穴および端面かど部は加熱されやすいので溶損しやすい。焼入れ条件設定時、投入電力や加熱時間に注意し、加熱コイルの形にも、工夫が必要である。図4.1.31は、過熱溶損しやすい部位を示したものである。
(A)接触溶損
(1 ひずみの影響
長尺ロールなど、焼入れ前に内部応力が存在する場合、加熱中にその応力が開放されて変形が生じ、それがある程度以上に大きくなると、コイルと接触して溶損が起こる。焼入れ前工程で、たとえばひずみ取りのための矯正など、内部応力が残るような処理をしないことが大切である。図4.1.32は、プレス矯正から焼入れまでの変形の概略図を示したものである。
(2 コイルの影響
コイルの劣化や強度不足により、コイルが変形して処理品と接触したり、コイルリード部の絶縁不良による短絡や、コイルの冷却不足によりコイルが破損して、そのときスパークが発生し、溶損が起こることがある。これを防ぐためにコイルの定期点検の実施、焼入れ条件に合わせたコイルの設計、絶縁の適正化、コイルの冷却水量の適正化が必要である。
(V)ひずみ
(@)ひずみ
(1 偏析、前組織の影響
偏析や前組織のばらつきに起因する変態の不均一から硬さ、硬化層深さに差が生じ、これからひずみが発生する。したがって材料としてできる限り偏析は少なく、前組織も均一なものであることが望ましい。
(2 形状の影響
非対称形で焼入れ面積が異なる場合ひずみが発生しやすい。拘束焼入れや焼入れ前の機会加工時の形状、寸法に配慮がひつようである。図4.1.33に焼入れ面積が異なる場合の反りや、ねじれのひずみの一例を示す。
(3 内部応力の影響
高周波焼入れ前の熱処理などで発生したひずみを矯正した場合、その残留応力が加熱時に開放され、ひずみとして現れることがある。焼入れ前は矯正をさけたほうがよいが、どうしても矯正したい場合は、応力除去焼なましを行うことが必要となる。
(4 加熱、冷却の影響
不均一な加熱や冷却を行うと、熱応力や変態応力がアンバランスな形で発生してひずみとして現れる。できる限り均一な加熱、冷却ができるように配慮することが必要である。
(A)ひずみ矯正不良
(1 材質の影響
靱性の低い材料、たとえば鋳鋼、鋳鉄、高合金鋼などから作られた製品は、ひずみ矯正時に折損することがあるので、変形の少ない焼入れ法を工夫することが必要である。どうしても矯正が必要な場合は、品物をある程度加熱し降状点を低めて、矯正することも考えなければならない。
(2 形状の影響
穴やキー溝など切欠きになるものが存在する場合、それらを起点として割れが生じたり、折損が発生したりする。これらの部分はできるだけ焼入れ後に加工するのが望ましい。
(W) 硬さ
(1 偏析、前組織の影響
高周波焼入れは、急速短時間加熱のため変態の際に編析や前組織の影響を受けやすく、元素の拡散が不十分となり硬さのばらつきが起こりやすい。極力偏析を少なくするとともに、前組織としては焼入れ焼戻し組織を選択するのが最もよい。また品物の表面に著しい脱炭層やフェライト層があると、所定の硬さが得られないので注意を要する。ただ通常の高周波焼入れのための過熱では、問題にするほどの脱炭は生じない。
(2 形状の影響
材質によっては、表面粗さが粗いと冷却が不十分になり、硬さの低い部分が発生することがある。表面粗さにも注意する必要がある。表面粗さは▽▽以上が望ましい。
(3 加熱、冷却の影響
オーステナイト化が不十分であったり、冷却不足になったりすると低硬さ部分が生ずる。たとえばピンなどの部分を噴射冷却焼入れする場合、ワークの回転数や焼入れ移動速度の影響もあるが、冷却ジャケットから噴射される冷却液の圧力、流量、角度などが不均一になると、バーバーズマーク(円周方向に色調に差のある縞模様)が発生しやすくなり、部分的に低硬度になる。 高合金剛の場合、加熱不足(オーステナイト化不十分)や過熱(多量の残留オーステナイトの生成)により所定の硬さが得られない場合がある。 材質に合ったオーステナイト化および冷却条件の選定と、場合によってはサブゼロ処理、エーテル、アセトン、アルコールなどの有機溶剤とドライアイス(-78℃)を混合した冷却媒体、あるいは液体窒素(沸点-196℃)を用いて冷却する。 一般的には、-80〜-100℃で十分であるサブゼロ処理は、極低温浴で処理するため、急激に冷却すると、割れの発生や変形が大きくなるおそれがあるので、ゆっくり冷やすのがよい。
(X)硬化層深さ
(1 偏析、前組織
同一化学成分でも偏析や前処理により、所定の硬化層深さが得られない場合がある。たとえばフェライト面積の大小は硬化層深さに影響する。フェライト面積率が大きいと硬化層深さは浅めになる。 図4.1.34は、前組織を種々に変えた同じS45C鋼を、同一条件で高周波焼入れをした場合の断面硬さ分布を示したもので、前組織が硬化層深さに影響を及ぼすことがわかる。最も有効硬化層深さが深いのは焼入れ焼戻し材で、α(フェライト)面積32%、α面積45%、球状化+P(パーライト)の順で硬化層深さが浅くなる。これはオーステナイト化が容易な順と一致する。
(2 加熱、冷却の影響
材質や形状にとり適正に加熱、冷却条件を設定しないと硬化層深さ不良が生じる。 たとえば選択した冷却剤の濃度、圧力、流量および噴射冷却角度などが適正でないと、焼入れ後バーバーズマークなどが発生したりして、硬化層深さが浅くなったりする。 加熱、冷却条件の適正化を図ること、および周波数の選定には十分注意する必要がある。
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